ニュースリリース
国内初の洋上風力発電用TLP型浮体の実海域における実証実験に参画
~新開発の超高強力ポリエチレン繊維「イザナス®ULC」が日本海事協会の承認初取得~
東洋紡エムシー株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長執行役員CEO:森重 地加男、以下「当社」)は、株式会社大林組(本社:東京都港区、代表取締役社長 兼 CEO:蓮輪 賢治、以下「大林組」)が国内で初めて実海域(青森県の沖合)で実施する浮体式洋上風力発電施設のTLP(テンション・レグ・プラットフォーム)型浮体設置実験に参画し、大林組、東京製綱繊維ロープ株式会社(本社:愛知県蒲郡市、代表取締役社長:新藤 直之、以下「東京製綱繊維ロープ」)とともに、浮体と海底をつなぐ係留索の共同研究開発を実施いたします。実験で用いる係留索には、当社が新規開発した超高強力ポリエチレン繊維「イザナス®ULC」を用いたロープが採用され、ロープの製造は東京製綱繊維ロープが行いました。
また、本実験を通じて、「イザナス®ULC」は、浮体式洋上風力発電施設向けのロープ用原糸として、国内で初めて一般財団法人日本海事協会の承認を取得しました。「イザナス®ULC」は、従来の「イザナス®」の高強度・高弾性率の特性を維持しつつ、その課題であった耐クリープ性能※1が大幅に向上しています。それにより、従来品に比べて疲労耐久性が向上し、長期間浮体の定着を安定化させることが期待されます。
当社は2030年までに、敦賀サイトにある「イザナス®」の生産設備を現状の2倍である年産2,000トンに引き上げる構想です。洋上風力発電の社会実装に向けて高機能素材の開発・生産を進めることで、再生可能エネルギーの普及とカーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。
※1 継続的に荷重を加えることで、変形が進む現象のこと。
1.TLP型浮体設置実験の背景
洋上風力発電施設の基礎構造形式には、海底に基礎を構築して風車を支持する着床式と、海に浮かべた基礎に風車を設置する浮体式があります。現在、浅い水深に適した着床式洋上風力発電が先行していますが、遠浅の海域が少ない日本では、水深が深い海域に適した浮体式の導入が期待されています。
浮体式にも様々な浮体構造・係留方式があり、スパー型やセミサブ型などは浮体動揺が大きく、発電効率が低いことなどが課題です。一方、TLP 型は、浮体の動揺安定性や発電効率が高いことが期待されるとともに、海域の占有面積が小さく、漁業への影響も少ないことが特長です。ただ、TLP型は一般的に設置が難しく、洋上風力発電の基礎として国内での施工実績はありません。
2.TLP型浮体実験について
2024年7月、大林組は青森県下北郡東通村岩屋の沖合3kmの海域に、緊張係留方式のTLP型浮体を設置しました。TLP型浮体は海底のアンカーと係留索で結び、浮体の浮力によって生じる緊張力を利用して基礎として機能させますが、この係留索に「イザナス®ULC」を用いたロープが採用されました。実験では実際の波浪条件における浮体の動揺安定性や係留索の緊張力の変化に加え、係留索と浮体との適用性などが検証されます。
3.「イザナス®ULC」について
超高強力ポリエチレン繊維「イザナス®」は、ゲル紡糸法※2を用いて製糸した高機能繊維で、釣り糸や船舶係留索、野球場の防球ネットなどに採用されています。「イザナス®ULC」の開発では、従来の製糸工程などを改良し、「イザナス®」が持つ軽量かつ高強度・高弾性率、高耐候性などを維持しながら、耐クリープ性能を実現しました。
■主な特性
引張強度 | 25 cN/dtex以上 |
破断伸度 | 3.0~5.0 % |
繊度 | 1760dtex |
以上
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